当カントリージェントルマンは、さまざまなバックボーンを持ち、歴史を経てきたヴィンテージスプーンやフォークなどの銀食器をリメイクし、新しいヴィンテージアクセサリーを制作・販売しています。
本物のヴィンテージ素材だけが身に纏うことのできる“貫禄”や“品格”というものを、リメイクという手法を用いて表現しています。そして嬉しいことに、今まで非常に多くの方々にご購入いただき、日々のお供としていただいております。
リメイクはスプーンだけではなく、サービングスプーンから制作した 髪留めなど、今までになかったスタイルでさまざまな作品を制作しております。
これら作品は、実際にその時代時代の人々に使用され、受け継がれてきたヴィンテージ素材のみを厳選し、アメリカなど海外のみから取り寄せて制作しています。
それではカントリージェントルマンがなぜ、銀食器をリメイクしたジュエリーを制作するに至ったのかをお話したいと思います。
ニューヨークでの運命的な出逢い
僕は以前約5年ほど広告代理店の営業マンとして働いていました。しかしその後自分のしたいことを探すべく、ニューヨークへ2ヶ月ほど旅をしていた時期がありました。
博物館を巡って見たり、路地裏にあるセレクトショップをのぞいたり、クラブにも顔を出して見たりと、特に目的もなくブラブラと過ごす日々。
そんな中で、ある運命的な出逢いを果たします。
その日は、マンハッタンのチェルシーマーケットを訪れブラブラとしていました。
チェルシーマーケットの中の少し広いスペースへ足を向けると、そこではフリーマーケットが開催されていました。それも、ただのフリーマーケットではなくクリエイター、要は自分で何かを作る職人たちが、自分が作ったものをそれぞれ持ち寄り、その場で展示販売をするというスタイルのいわばクリエイターズマーケットでした。
手書きのグラフィティ(※グラフィティ:地下鉄などの構内、電車にスプレーでアートを描くこと)をキャンバスに書いて売っている人、天然石を自分で作った金具に埋め込んだオリジナリティのあるアクセサリーを並べている人、珍しい形のレザーバッグを制作している人など、大小様々なお店が並んでいました。
「へー、面白そうだな。」そんな感じで一つ一つお店を見ていると、髭を生やしたおじさんが小さく小分けにされた木の箱の後ろに無愛想に立っていました。
「この人は何を作っているんだろう。」と思い、木の箱を覗き込んでみると、そこには何やらキラキラしたものが。
これが、自分とスプーンリングとの初めての出逢いでした。
初めは気がつかなかった面白み
古くて傷も付いているようなスプーンを、ニッパーか何かでバツっと切って、ペンチでグイっと曲げただけのような、大雑把でワイルドな作りでしたが、ただのスプーンがリングとして新しい命を吹き込まれているのを確かに感じ、衝動的にいくつか購入してしまいました。
確か価格は30ドル程度だったように記憶していますが。
この時は、まだ自分が人生において何を楽しいと感じ、何をして生きていくかという想像力が全くもってゼロであり、まさか自分がそのスプーンリングを作る側、クリエイター側に回るなど全く想像もしていませんでした。
ただ、クリエイターの人たちがマーケットを訪れている人たちと楽しそうに談笑したり、作品の説明をしている姿をみてとても生き生きしているなと感じたのは、覚えています。
クリエイティブな街。ニューヨーク
滞在した期間はたったの2ヶ月でしたし、滞在中は結局自分が今後やっていきたいと思う、いわば情熱の矛先となるようなものが一つも見つからず、少し切ない思いを胸に帰国したのですが、今思い返してみればあれはとても貴重な時間だったんだと改めて思います。
それは、この写真のようなクリエイティヴなモノをたくさん目にできたから。ちなみにこの写真はマンハッタンのソーホーあたりで見つけたモノです。
フェンスにどこにでもあるような紐をくくりつけて、文字が書かれていました。いわばスプレーを使わないグラフィティ、といったところでしょうか。
これもソーホーあたりで撮影したのですが、錠前一つ一つに文字を描き、それを配置することで自分のメッセージを発信するという新しいグラフィティです。少しお金がかかりそうなグラフィティですが。。。
これはマンハッタンのメイシーズという大型デパートのクリスマス限定のショーウインドウです。子供たちもたくさん釘付け。キラキラした鹿や木が、とても美しくてなんだかワクワクしてしまいました。
こちらも毎年恒例で設置されているそうです。マンハッタンはラジオシティ前に置かれている、巨大なオーナメント!右下の男の子と比較しても、相当大きなオーナメントだということがお分かりいただけると思います。
そのほかにも、まだまだクリエイティブなものがニューヨークにはあふれていました。
日本には日本の良いところがあるし、単純に比較できるようなものではないとは思いつつも、ニューヨークにいる間は本当に楽しくて、日本もこんな風にクリエイティブな街であったらなあなんてことを何度も思いました。
クリエイティブが楽しい理由
これはマンションの壁に描かれたお店の看板です。どうやって描いたのか、その描いた人もすごいですが、これを描いていいよと許可を出したマンションのオーナーもまた懐が広いですよね。笑
さて、ではなぜクリエイティブなものが楽しいのでしょうか。
僕が思うにクリエイティブとは、「クリエイターの創造した世界」であると思います。
現実の世界は、大体の場合退屈です。大人になればなるほど世の中の仕組みやモノの成り立ちを理解してきて、様々なことを知れば知るほど新しい発見というものは少なくなってきます。
そんな時に壁に大きく描かれた看板を見たり、地下鉄でプレイするミュージシャンの曲を聞いたりすると、その一瞬そのクリエイターの世界にトリップすることができると思うのです。
子供が日々楽しそうに大声で笑いながら過ごせるのは、きっと毎日が新しい世界との出会いの連続だからだと思います。
人々がクリエイティブなものに関心を持ち、また熱狂するのは僕たちに新しい世界を見せてくれるからなのではないかと思っています。
クリエイターに目がキラキラしてどこか子供っぽい人が多いのも、彼らは日々自分の世界をクリエイトしているからではないか、今ではそんな風に感じています。
なぜ銀食器なのか
僕が銀食器をリメイクするようになったのは、自分の世界を少しずつ作りたいと思った時、“ストーリー”を内包している素材から作品を制作することで、自分の世界を作っていきたいと思ったからです。
自分という人間を見つめ直した時、自己主張が強かったり、何か大勢の人たちに伝えたい強烈な衝動があるわけではありませんでした。
ただ、何か新しい世界を作っていきたい、表現したいという気持ちがありました。
そこで自分は、“発信者”ではなく“案内人”という立場に立って制作をすることに決めました。
誰の言葉か今は忘れてしまいましたが、
「偉人とは、その人間一人で立っているのではなく、それまでの数えきれない最高の者たちを土台として立っている」
という意味の言葉があります。
この世界は数えきれない人々の歴史を踏み台として、進化を続けてきました。
そんな歴史を経てきたヴィンテージ素材をリメイクして、新しい命を吹き込むことでその歴史やストーリー、人々の暮らしにまで、思いを馳せてもらいたい。
果てなき未来に思いを寄せることも大事なことですが、今この世界に立っている自分は、過去の人々が命がけで獲得してきたものの上に立っている、ということを少しでも感じて生きることも、同じくらい大事なことだと捉えています。
その歴史を感じながら、その時代時代の人々の生活に根付き、受け継がれてきたスプーンなどの食器を素材とした作品を制作することで、作品を身に付ける人がその長い歴史に思いを馳せることができれば。
そんな想いから、カントリージェントルマンでは銀食器を主な素材として、作品作りをしています。
現在ではホースシュー(馬の馬蹄。蹄を守るために作られた鉄の靴)から小物棚や壁飾りを制作したりもしています。それもやはり、新品ではなく実際に使われていたものから制作することにしています。
それも同じく、日本ではなく海外の人々の生活に思いを馳せる機会を、自分の作品で提供できればいいなという想いから、素材選びをしています。
カントリージェントルマンのこれから
カントリージェントルマンはまだまだ小さなブランドです。
まだまだ限られた場所、限られた方の手にしか渡っていない作品たち。
それでも、手にしていただいた方はとても喜んでくださっています。
これからも一つ一つ、もっと多くの方の手に新しい世界を垣間見れる作品をお届けできるよう、カントリージェントルマンは日々新しい世界をクリエイティブしています。
もしどこかでお会いできる機会があれば、その時にはぜひカントリージェントルマンの世界観を、たっぷりと楽しんでいただけたら、そう思っています。