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スプーンリングの歴史

更新日:2020年5月25日


歴史があるスプーンリング

最近では感度の高いファッショニスタを中心に、徐々に認知され始めてきたスプーンリング。

当カントリージェントルマンでは、名だたるシルバーカトラリーブランドのスプーンから幾つもの作品を生み出し、とてもありがたいことに沢山の方にご購入いただいてきました。

しかし、そもそも私たちがスプーンリングなるものを目にするまで、どのような経緯があったのでしょうか。

今回こちらの記事では、新たなヴィンテージ・アンティークアクセサリーとして市民権を得つつある、知られざるスプーンリングの歴史について、紐解いて行きたいと思います。

 

スプーンリングは愛の証

スプーンリングは愛の証

一説によれば、スプーンリングの歴史は17世紀のイギリスにまでさかのぼるようです。

17世紀当時、銀食器を持つことができたのはその価格帯の高さから一部の富裕層(貴族や商人)に限られていました。一般の人々がそれらを持つことは、非常に困難と言わざるを得ないような状況だったそうです。

あるところに、裕福な家の召使いとして働く男がいました。彼には結婚を申し込もうと思う大切な女性がいました。しかし、彼には本物の婚約指輪を買うことができるほどの経済的な余裕はありませんでした。

この女性になんとか喜ばせて婚約を結んでほしいと考えた男は、高価な銀のスプーンを雇い主の家から盗み、それを職人に頼み込み、スプーンリングへと加工させることにしました。

つまり彼は、本物の婚約指輪を買う代わりに、銀のスプーンリングを送ることで婚約者に喜んでもらおうと考えたのでした。




このアイデアは彼らの中で瞬く間に広がり、多くの男が裕福な家から銀のスプーンを盗み、スプーンリングを作らせました。

しかしことはそう上手くは運びません。当時銀食器を持つことは富裕層にとってはステータスの一つでした。そのため、銀のスプーンを持つ人の多くが自分の家系の紋章やイニシャルをスプーンに彫っていたのです。

スプーンを盗まれたと気づいた富裕層たちは、その紋章やイニシャルを手掛かりに捜査を依頼。結果として、多くの者たちがお縄につくところとなったのです。

このようなイタチごっこは、17世紀から19世紀まで続き多くのスプーンリングが作られていったそうです。

その後、スプーンリングはファッションの一つとして徐々に人々に受け入れられ始めるようになります。1960年代に興ったヒッピーブームでは決して少なくない人がスプーンリングを着けていました。

 

1960年代:ヒッピーとスプーンリング

1960年代のウッドストックのヒッピーたち

1960年代になると、アメリカではヒッピーと呼ばれるある種の文化が生まれました。


歴史家でもない私がこの文化について正確な表現を提供することは難しいのですが、第二次世界大戦が終わり、それまでの抑圧・保守的なキリスト教に対するカウンターカルチャーとして生まれたムーブメントがこのヒッピーであり、


さらには1955年から始まった、「アメリカ史上最悪の戦争」との悪名高いベトナム戦争の惨状を目の当たりにした人々によって、反戦運動の高まりも相まって1960年代にはさらに大きく花開いていくことになりました。


また、彼らは中産階級の社会から疎外されたと感じ、物質主義の支配からの解放を目指し、とても独特なライフスタイル・ファッションスタイルを作り出していきました。


現代においても「ヒッピー風スタイル」などとして紹介されることもありますが、男性であれば長い髪とひげを生やし、女性であればボトムとして裾に向かって広がるデザインの「ベルボトム」を履くことが多かったようです。


さて、ここまでヒッピーに関して少しご紹介させていただきましたが、実はこの頃に隠れて人気だったアクセサリーこそがスプーンリングでした。


スプーンリングを贈られた女性

物質主義からの解放を目指した彼らにとって、既製品を身に付けることよりも手作りでリメイク・アップサイクル(この頃はまだアップサイクルという言葉は誕生していませんでした)のアクセサリーを作ることが、流行していました。


その中で、身の回りにあったスプーンからリングを作り、身に付けるということは自然な流れだったのかもしれません。


このような時代のうねりの中で、スプーンリングは人々からの注目を集め、愛されてきたのでした。


現在でもスプーンリングはその人気を保持し続けており、世界的に有名なブランドであるマルタンマルジェラの元デザイナーが立ち上げたブランドGabyでは、様々なスプーン・フォークからリングやバングルを発表しています。

さらにはハリウッドの人気女優、Kristen Stewart(クリステン・スチュワート)などもスプーンリングを着けていたことが話題となり、その人気はさらに高まってきています。

ティファニーらしいシンプルかつ味わいあるデザインのスプーンリング

Wallace Sir Christopher ヴィンテージスプーンリング

こういったスプーンリングに対する注目度の高まりを見たいくつかの企業は、新しい金属(昔のスプーンではないもの)からスプーンリングを作り、市場に投入することさえありました。

しかし多くのアンティークスプーン(シルバー)は、重さでいくらという形で大量に溶かされ、銀塊へと姿を変えて行きました。これにより、アンティークシルバースプーンの数は年々少なくなっていってしまっています。

カントリージェントルマンでは、その昔人々が愛を伝えるための一つの手段として作り上げた、スプーンリングという文化と歴史をこれからも後世に残していくべく、一つ一つのスプーンの背景をそのリングに担わせながら、ヴィンテージアクセサリーとして皆さんにお届けしていきたいと思っています。

※カントリージェントルマンのその他のスプーンリングはこちらからご覧頂けます。

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