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銀食器の知られざる世界 -Reed&Barton-


今回は世界的な老舗銀食器ブランドであり、1996年のアトランタオリンピックではメダルの製作も依頼されるほど、その芸術的なセンスと品質の高い製品への信頼で知られるReed&Bartonの歴史について、紐解いていきたいと思います。

リードアンドバトンの1920年代の広告

http://www.vintageadbrowser.com/household-ads-1920s/29

 

世界的ブランドReed&Bartonの始まり

Reed&Bartonの起源は、1822年に遡ります。

Reed&bartonのシルバー製品に刻まれるロゴ

http://www.silvercollection.it/reedbartondate.html

マサチューセッツ州トーントンで、創業者Isaac Babbitが宝石店を設立しました。その後1824年になると、Isaac Babbitは当時注目を集め始めていた新素材”ブリタニアメタル”に魅せられ、そのブリタニアメタルを使用した製品を製造・販売する会社「Babbitt&Crossman」を立ち上げました。

リードアンドバートンの創業者Isaac Babbit

https://en.wikipedia.org/wiki/Isaac_Babbitt

なお、ブリタニアメタル自体は18世紀にイギリスで発明されていましたが、初めてアメリカでブリタニアメタルを製造したのが彼だったことは、あまり知られていません。

同社はその後1827年にBabbitt、Crossman&Company、1829年にはCrossman West&Leonardに度々社名を変更しながら、質の高いブリタニアメタルと類まれなデザインセンスを武器に、多くの顧客を獲得することに成功します。

Isaac Babbitはさらなる製造技術の向上を求め、新たに腕のいい職人たちを採用します。その職人たちの中にいたのが、のちにReed&Bartonを共に立ち上げることになるHenry G. ReedとCharles E. Bartonなのでした。

順調な滑り出しを果たした「Babbitt&Crossman」でしたが、徐々に経営状況に暗雲が立ち込めてきました。

そんな中、会社を立て直すべく立ち上がったのがHenry G. ReedとCharles E. Bartonだったのでした。ちなみに彼らがその頃まだ20代であったことを考えると、若くして非常に大きな決断をしていたことがわかるかと思います。

Reed&Bartonのロゴ

https://www.radcliffejewelers.com/catalog/reed-barton-bc/lnx-p805/

1834年には、とうとうIsaac Babbitは会社と工場をHenry G. ReedとCharles E. Bartonに売却し、彼らは仕事を引き継ぐことを決意しました。二人はお互いの名前を取り1840年に「Reed&Barton」を立ち上げます。これが現在まで続く世界的銀食器ブランド、Reed&Bartonの始まりとなりました。

 

ブリタニアメタルとは

さて、あまり聞きなれないブリタニアメタルとは一体どんな素材なのでしょうか。

その秘密を解く鍵は、ピューターにあります。ピューター(しろめ、白目、白鑞)とは、比較的古くから存在する、スズを主成分とした低融点合金のことを指します。具体的には以下のような質感の素材でした。

ブリタニアメタル製の美しいコップ

https://www.ebay.com/itm/WMF-WMFB-Britannia-metal-Wine-Cup-Beaker-art-nouveau-made-in-Germany-c1900s/153337386811?hash=item23b39ed73b:g:0WMAAOSw8FRZt7tB:rk:2:pf:0

一般的にピューターはスズと鉛、もしくは銅などで製造されていましたが、18世紀になるとイギリスで鉛の代わりにアンチモンと呼ばれる素材を加えることが発明されました。

これにより、ピューターは今までよりも白く美しく輝く金属へと生まれ変わりました。この金属を、ブリタニアメタルと呼ぶようになったのです。

 

Reed&Bartonとシルバーの出会い

現在では老舗の銀食器ブランドとして名を馳せているReed&Bartonですが、意外にも彼らが本格的に銀製品の販売への転向をしたのは、創業から約49年後の1889年のことでした。

そもそも彼らが創業した1800年代は、食器業界は激動の時を迎えていました。

まず、18世紀から19世紀まで食器をより美しく長持ちさせる手法として開発されたのが、純銀を銅のプレートに融着させる工法である、シェフィールドプレートと呼ばれるメッキ方法でした。(1742年頃イギリスのシェフィールドの金工トマス・ボウルゾーバーが発明)

トマス・ボウルゾーバーが発明したシェフィールドプレート

http://aaa-publishing.com/wp-content/uploads/2015/01/2-2-1904-rolling-mill-patent.jpg

しかし1840年ごろには新たに発見された工法である電気メッキが主流となり、シェフィールドプレートは徐々に衰退していくことになります。

電気メッキの登場によって、今までよりも安価で美しい銀メッキの食器を手に入れることができるようになり、それまで消費者の間で愛されていたシェフィールドプレートやブリタニアメタルの食器は、徐々に下火になっていきます。

そんな時代の波に乗ろうとし、Reed&Bartonは銀メッキの技術を意欲的に導入し、一時期先駆者としてもてはやされました。

しかしそんなReed&Bartonをさらなる時代の波が襲います。

アメリカ全土を熱狂の渦に巻き込んだ、Comstock Lode(1859年にネバダ州バージニア山脈で発見)と呼ばれる、アメリカ合衆国最初の銀の大きな鉱床が発見されたのです。

ゴールドラッシュならぬシルバーラッシュが起こったComstock Lode

http://loc.gov/pictures/resource/pga.01999/

これにより、銀の価格はみるみる下がっていき、銀メッキ製品と銀製品の価格の差はあまりなくなってしまいました。そのため、Reed&Bartonは銀メッキだけでなく、1889年にはスターリングシルバーの製造業を始めることになったのでした。

 

Reed&Bartonのその後

激動の1800年代を走り抜けたReed&Bartonでしたが、実は創業から27年後の1867年にはCharles E. Bartonが、スターリングシルバーの製造業を発表してからわずか12年後の1901年にはHenry G. Reedがそれぞれ死去しており、それ以降はHenry G. Reedの義理の息子であったWilliam B.H. Dowseに、経営を譲っています。

経営がDowseに移った後もReed&Bartonは躍進を続けます。1908年には傑作「Francis I」を発表します。豪華絢爛なそのカトラリーパターンは、世界的に高い評価を受けReed&Bartonの名前を世に知らしめました。

世界的に高い評価を受けた傑作Francis I

https://www.michelessilver.com/francis-reed-barton-sterling-tea-set-with-tray-p-11658.html

1900年代中頃には第二次世界大戦が勃発したため、同社は一般消費者層向けの食器製造から軍隊向けのステンレス製の食器製造へと転向します。しかしその後戦争が終結すると、彼らはまた銀食器の製造を再開し、帰国兵によるベビーブームを力強く支えたのでした。

戦争が終わりスターリングシルバーの食器の製造を再開した

https://www.ebay.com/itm/1950-REED-BARTON-Dancing-Flowers-Gay-New-Silverware-Pattern-VINTAGE-AD-/271663076459

その後も同社は銀食器・ステンレス鋼食器などで多くの消費者に愛されていきましたが、銀食器の衰退や経営状況の悪化によって2015年に破産し、営業資産は食器類および食器類の競合メーカーであるThe Lenox Companyによって取得されています。

アメリカの人々を支え続けたReed&Bartonのヴィンテージカトラリーには、そんな彼らの熱い情熱とほとばしるデザインセンスが秘められています。

 

傑作「French Renaissance」

今から約78年前の1941年にデザインされたのが、このFrench Renaissanceでした。

美しい銀食器French Renaissance

http://www.espressomachinejudge.com/antique-silver-pattern-reed-and-barton-sterling-for-unique-tableware-design/silver-pattern-french-renaissance-reed-and-barton-sterling-for-elegant-tableware-decor-ideas/

デザイナーはGeorge L. Turnerで、彼に関する情報はあまり多く残されてはいませんが1907年頃にReed&Bartonに入社し、以降様々な作品のデザインを手がけたとされています。

彼がReed&Bartonに入社する以前は、Gorham Companyというこれまた銀食器ブランドの名門にいたとされます。この経歴を見るだけでも、彼が実力のあるデザイナーであったことは容易に想像がつきます。

さて、本作品「French Renaissance」はその名の通りルネッサンス様式をテーマとしていると思われます。そもそも”Renaissance”とはフランス語で”再生”を意味しており、ルネッサンス運動とは古代文化の復興・新しい文化の生産を推し進めようとした運動でもあります。

実際のデザインを見ても、少し古い年代の豪華絢爛なデザインとなっており、植物などの有機物が大胆に配置されており、Reed&Bartonのものづくりへの情熱を感じさせる勢いのある逸品となっております。

ヴィンテージのバングル

ヴィンテージのバターナイフバングル

今回当Country Gentlemanは、こちらのバターナイフをバングルとして制作しております。バターを塗る部分のプレーンな輝きと、計算され尽くした持ち手部分の装飾が見せるコントラストを、ぜひこの機会に味わっていただければと思います。

スターリングシルバーの美しい輝き

こちらのバングルは限定3点のみとなりますので、お早めのご検討をお勧め致します。

城取

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