"サステナブル"という言葉が盛んに聞かれるようになってきています。社会的な場合に使われるだけではなく、最近ではファッション業界でも多用されるようになり、徐々に注目を集めてきているワードの一つです。
では一体このサステナブルとは、何を指す言葉なのでしょうか。
今回はそんな知っているようで知らない「サステナブル」という言葉の持つ意味を、ファッションの観点から紐解いていきたいと思います。
<関連記事>
アップサイクルとリサイクルの違いを考える
サステナブルとは
そもそもサステナブルは英単語の一つです。
Sustainable(形容詞):持続できる、耐えうる
※出典:Weblio(https://ejje.weblio.jp/content/sustainable)
つまり最近よく聞く<サステナブルな活動>とは「持続できる活動である」という意味合いになります。
現在、このサステナブルという単語を使う場面は大きく2つに分けられます。それが「社会」と「環境」に対してです。
まず「社会」に対してサステナブルが使われる実例を考えていきます。
例として「ブラック企業はサステナブルか否か」を挙げましょう。
ブラック企業は法定時間を大幅に超えて働かせるなど、無茶な働き方を社員に要求します。確かにそれによって会社に利益はもたらされるでしょう。
しかしこんな会社で働きたいと思う人がいるでしょうか、さらにはそこで働き続けたいと思うでしょうか。答えは「NO」です。
このように持続可能でない働き方を要求するような企業は、持続可能性が低い。つまりはブラック企業はサステナブルではない。と言うことができます。
さらに言えば、昨今の少子化による売り手市場の大幅な拡大により、このようなブラック企業は廃業を余儀なくされるか、サステナブルな経営への大転換を求められると言う運命にあります。
(大手牛丼チェーン店のワンオペ問題など、枚挙にいとまがないほどこの淘汰の波が到来しています)
次に「環境」に対してサステナブルが使われる場合、それは「地球に対して持続可能かどうか」という意味合いを持ちます。
この「環境×サステナブル」を「ファッション」の観点から紐解いていくのが、今回の記事の目的となります。
「地球のために持続可能なファッション」
例えば、皆さんはジーンズを作るのにどれくらいの綿花が必要かをご存知でしょうか。国連欧州経済委員会(UNECE)のBirgit Lia Altmannと、Olga Algayerovaによれば、
答えは1kgだそうです。
それではその1kgの綿花を栽培するために必要な水はどのくらいでしょうか。答えはなんと1万リットル以上です。これは人間一人分の飲み水の約10年間分を消費することになります。
(世界的ジーンズブランドLevi’sのサステナビリティ部門のマイケル小堀氏によれば、綿花栽培からジーンズの生産・廃棄までに要する水の量は3,781リットルとされています。統計の調査方法によってある程度の差があるようです)
文字で書くと大してインパクトがないかもしれませんが、一息置いてから改めて考えていただければと思います。
たった1本のジーンズのために、自分が10年間に飲む水が消費されているという事実を。
私は今回この記事を書くにあたって様々な記事や文献に触れ、驚愕しました。
さらに言えば、ジーンズは年間どれだけ作られていて、それに対して貴重な水がどれだけ消費されていっているのか。
それを想像しただけでも恐ろしい気持ちになりました。
その他にも、彼らの調べによれば以下のような事実も明らかになりました。
・ファストファッションの流行により、2000年と比較すると60%多く衣料品が購入されている。
・ファッション業界は全世界の下水の20%と、炭素排出の10%を生み出している。
・ファッション業界のための綿花栽培などの耕地は全世界のたった3%だが、そのために全世界の殺
虫剤の24%と農薬の11%が使用されている。
・世界の中流階級は今後30億人(2015年)から54億人(2030年)に増えると考えられ、それに伴い2050年の繊維産業は現在の約3倍の資源を必要とするだろう。
このように、ファッション業界は非常に多くの資源を必要とすることがお分かりいただけたかと思います。
しかし果たしてこれだけの資源を無尽蔵に消費することが、持続可能であると言えるのでしょうか。これも答えは「NO」なのです。
国連欧州経済委員会(UNECE)の事務総長を務めるOlga Algayerovaは、「ファッション業界はこの問題に対してギアを上げる必要があることは明らかです。環境に優しくかつ健康的な労働環境のために、社会的な改革を支援していくべきです。」と話しています。
https://www.unece.org/press/execsec/current_exec.html
私たちが現在地球で生きているのは、自分たちの先祖たちが資源を残してくれていたからです。
しかしこの資源を私たちが使い果たしたら、私たちの息子や孫、その下の世代の人間たちは生きていけなくなってしまうでしょう。
ファッションを楽しむ人も、衣服を生み出す人たちも、もう一度その観点に立ち戻って環境に対して真正面から向き合う時期が来ていると言えます。
実際の取り組み
先ほど一例でジーンズのお話を取り上げましたが、すでにサステナブルなファッションを目指し、実際に取り組んでいる企業がいくつか存在しています。
その代表的な一例として挙げたいのが、世界的なブランドであるLevi’sのサステナブルな取り組みについてです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%B9#/media/File:Levi%27s_logo.svg
詳しくはこちらの記事(https://www.houyhnhnm.jp/feature/61757/)に詳しく記載されていますが、要約すればこのような取り組みをしています。
・〈リーバイス®〉独自の節水加工技術である「ウォーターレス」を開発。
・ウォーターレス技術を使った〈リーバイス®〉製品は全体の40パーセントとなり、その結果削減した水の量は10億リットルにもなった。
・ウォーターレス技術をオープンソース化し、競合他社にも共有した。
・「ベターコットンイニシアティブ」に参加し、綿花栽培時の水を減らし、化学物質の使用もなるべく抑える取り組みを進めている。
このように世界的な企業が真正面からこの問題に取り組むことは、非常に大きな意味を持つと思います。
目先の利益だけではなく自らが持つ社会的責任を自覚した上での高潔な活動は、私が尊敬する白洲次郎さんも体現されていた、<ジェントルマンとして生きる上での一つの条件>であった
「noblesse oblige(ノブレスオブリージュ)」:身分の高い者は、それに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある。
という心得にも通ずるところがあるように思います。
「自分が儲ければ何をしてもいい」といった拝金主義ではなく、もっと深く広い視野を持った上で「本当に理想的なブランドとは」「次世代以降でも持続可能な生産体制とは」という、一般のファッションブランドは目を背けたくなるような、もしくはその問題にすら気づいていないブランドもある中で、真っ先にこの問題に立ち向かっていくというこの姿勢は、学ぶべきところが非常に多いと言えます。
Country Gentleman×サステナブル
当ブランドCountry Gentlemanは、図らずも創業当初からサステナブルな活動をしていたと言えます。
作品の制作に使用する材料は実際に使われていた銀食器や、錆びた馬蹄、コインや古い木材、古い雑誌を中心としています。
もともと私はそこまで「サステナブル」という言葉に馴染みがなく、単純に古いものが持つ”歴史”や”ストーリー”に魅せられ、ヴィンテージ素材を使用した作品を制作するようになりました。
そしてブランドを立ち上げ様々な経験を重ねていくうちに、「サステナブル」という言葉と活動を知ることになりました。
そんな時ふと自分が行ってきた制作活動を振り返ると、無意識のうちにサステナブルな制作活動をしてきていたことに気づきました。そしてその活動の必要性を伝えていきたいとも思うようになりました。
とは言え、まだまだ周りの人々に対して働きかけられるほどの影響力も知名度も持ってはいません。
しかしそれでも、この記事を書くことで少しでも多くの方にそんな活動や考え方があるんだということを知ってもらえれば、と思ったのです。
そもそもこのCountry Gentlemanというブランド名は、私が尊敬する白洲次郎さんの生き様に感銘を受け、名付けました。
https://buaiso.com/about_buaiso/jiro.html
彼は本物の紳士と言われていましたが、紳士(ジェントルマン)として生きるために必要とされたのが、先述した「noblesse oblige(ノブレスオブリージュ)」という考え方でした。
”消費”するという生き方から、”生み出す”という生き方を選択し、それを「作品を買って」応援してくださるお客様のためにも、いかにこのサステナブルという活動の重要性を伝えていくべきかという想いで、今回この記事を書き上げました。
アップサイクルでサステナブルを実現する
アップサイクル、という言葉についてはまた別の記事でお話をできればと思いますが、当ブランドCountry Gentlemanの制作スタイルは、厳密にはアップサイクルという手法を用いていると言えます。
これからもCountry Gentlemanは、このアップサイクルを進めていくことでサステナブルな経営をしていきたいと真剣に考えています。
自分が愛する家族、そしてその下の世代にこの素晴らしい地球の自然を守り伝えていくために。
そして何より、ヴィンテージ素材の持つ”歴史”や”貫禄”の魅力を、一人でも多くの方へ味わっていただくために。
<関連記事>
Комментарии